きぬかつぎ

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小説の感想・中野ブロードウェイ脱出ゲーム

コロナ前にあった友人から行くことを勧められていた中野ブロードウェイが小説の舞台になっていたことに気づいた。

結局は都合がつかなくて行かれなかったけれど、次回帰省したら是非、と思っている。

予習も兼ねて?と思い読んでみた。

ちょっとネタバレありです。

平均2、3巻以上の長さの小説を読むことが多くなったので、一冊きりの作品は物足りないかな?と思いながら読み始めた。

確かに読書にかけた時間は長くはなかったけれど、中身はかなりこってりしていたと思う。

内容をまとめると、一般人の高校生の男の子がふと入った中野ブロードウェイで不思議な女の子に出会う。その子は実は芸能人で、オフの日を利用して来ていたらしいが、この二人で行動し始めてすぐに建物の中に閉じ込められ、屋上から順に下に降りて脱出を試みる。どこの階でも奇妙な人や現象に遭遇するが、大体危機一髪のところで逃れるが一階の出口からは出られず、地下まで行ったところで一連の現象の種明かしをしてくれる人物に出会うが、その種明かしにはまだ続きがあり、それは意外な人物が深く関係していた。少年は危うい状況に陥りかけるが、意外な人物が彼のために頑張るのだった、というもの。

読み終えて最初に思い出したのは安部公房の『密会』とレムの『ソラリス』だ。上述の奇妙な現象の数々はこの二つの作品の印象を思い起こさせた(少なくとも私には)。精神的ショックやグロテスクなシーンなども結構あり、心霊現象のホラーとは異なる恐ろしさを満喫?できる。

そしてあのなんとも言えない閉塞感と脱力感に似たような感覚を、この作品ではかなり最後の方まで少しずつ味わった。

少し残念だったのは、最後の方の種明かしというか、背景についての解説の部分だ。些か長すぎたような気がする。それと各階で出てきた人物たちが最後にパズルのピースを一つずつ埋めていくのかな、と思ったらそうでもなかったこと。彼らの人生とその最後、そしてキャラクター各々が最後に意味を持ってきたらもっと面白かったのではないかな、と思う。

一番最後の締め括り方はジュブナイル(古語)っぽくて良かった。状況だけは最初からこうなるのだろうとは思っていたが、こういうセリフで終わらせると青春色がより濃くなってなかなかよろしい。

こってり具合から、私には何度も読み返したくなる類の作品ではないが、実物を見る日が(いつになるかわからないが)さらに楽しみになった。

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