きぬかつぎ

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小説の感想・ホーンテッド・キャンパス 最後の七不思議

副題が意味深で、これもしかして最終巻?と勘違いしてしまった。

そんなこと紹介文にも書いていないしどこにもない。そして実際読んでもそうではなかった。今回ももどかしい若者二人と、そしてあれこれの怪奇があり、そして次回に続いて行くとわかった。ここまでは全然ネタバレじゃないのであらかじめ記しておく。

ここから先はちょっとネタバレありです。

時はクリスマス直前であるらしかった。

主人公君は想い人(古語)の女の子に何をプレゼントしようか思い悩んでいるらしい。

まだ付き合っていないのに?早くない?とおばさんは思うわけだが、付き合っていないけど付き合っているも同然的な感じだからいいのだろう。フィクションだし。それにおばさんの感覚での話なので今の若い人はそんなのどうとも思わないかも知れないが。

とにかく、彼は何かを贈りたくてカタログを穴が開くほど見つめたり、周りに相談したりしている。あくまでも青春なのである。ちょっと今時古風な感じの。

最初の怪異事件は彼の想うこよみの友人だという女の子の話だった。

人間とは(猫でもきっとそうだろうけど)思っているように行動できるとは限らず、ついつい流されてしまいがちである。その女の子はいつでも誰にでも押し切られるタイプで、こっちが読んでいてももどかしくなってしまう。そういう瞬間は誰にでも多かれ少なかれあると思うけど、彼女の場合はそれが極端に多いらしい。

でもそれ自体が怪異を呼んだわけではなくて、その性格で仕方なく引き受けてしまったことから怪異にあってしまう。そのシーンの描写が怖い。私がこういうのに遭ったら間違いなく絶叫してしまう。

原因と対処法は冷静頭脳明晰な部長が見つけて割とすんなり解決した。そして思ったように、女の子も自分の在り方を改めて考え直したらしく、そっちも解決したようだ。

次の話は別の意味でちょっともやもやした話。やはり女の子の話なのだけど、最初の事件の子の正反対みたいだった。ぎやああとなる怪異ではなかったけど見える人だったらすごく嫌なものだっただろう。そしてこの場合、本当に割りに合わなあい目に遭った人への救済は?と思うともやもやしてしまった。

で、最後の話。これは結構アクションというか、前半2作が比較的静的だったのと違って動的だった。よくある学校の怪奇ものなのだけど、ここでこの巻の最初に主人公君が全く別ルートでたまたま行った小中学校が出てくる。あのシーンが出てきたのはこれのためか、というやつだ。

副題にあった通り、このお話がその学校の七不思議を扱ったものである。どこの学校にも必ず七不思議があり、私が太古に通っていた高校でも、クラブ活動で入部して早々に先輩方から伝授されたものだ。そして当然のように冬の夕方など、人気のないトイレに一人で行くのが怖かったものである。

でもこのお話はそういうことではなかった。

小中学校と並んで立っているらしくて七不思議を共有している。そして奇妙なことに、よくある七不思議のパターンが六つあり、最後の一つだけがオリジナルっぽいのだ。これは不気味だ。オリジナルっぽいということは実話をベースにしているっぽいということで。。

種明かしをしてしまうとああそういうことだったのか、という人間の悲しい話に基づいたものだとわかる。それ自体は実は悲しいけれど怖くない。怖いというかこれは嫌だな、すごく嫌だなと思ったのが怪異現象だった。

見えなくて良いものが見えるのは嫌だ。でも聞こえなくていいものが聞こえるのもすごく嫌なものだ。この場合は後者の方で、これは心を抉られるな、と思った。

幸い長編ではないので私の心が抉られる前に事件は解決した。

そして解決しなかったのは、やはりというか、奥ゆかしい青春中の二人なのであった。まあこういう時期が一番楽しいわけだけれども。