きぬかつぎ

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小説の感想・チャンネルファンタズモ

またもや猫の表紙絵に釣られて選んでしまった。

猫の表紙はずるいのだ・・・

ちょっとネタバレありです。

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とあるスキャンダルを嗅ぎつけたせいでいわゆる「消された」形で有名テレビ局を追われ、どこにも採ってもらえず、ようやく小さなオカルト系テレビ局で働くことになったおっさんのお話。

相棒として元ヤンの構成作家女史となぜか黒猫と一緒にあちこちに取材に行っていろんなことを突き止めるのだった。

最初はよくある都市伝説が、本当は単なる人間ドラマだったりするというパターンだった。ネタがバレるまでの緊張感は決して大きくはないけれど、怖い話を怖がる程度の私がトイレに行くのを躊躇わない程度の怖さで心地よかった。

おっさんの方はこの手の番組には全く情熱が湧かず、だが番組制作のプロという意地を原動力にして取材を進める。まあ言ってみれば給料をもらっているのだからその分だけは働く、みたいな感じだろう。

構成作家女史の方はオカルト大好きで霊感が欲しくてたまらず、どの取材も初霊体験を目指して期待たっぷりにでかけるのだが、残念ながら毎回空振りに終わってがっかりする。

大手のテレビ局のやり方と空気に染まったことを誇りにしていつか返り咲くことを夢見て高級マンションで引き続き暮らすおっさんと、弱小テレビ局であろうがマニア向けにしかならないジャンルであろうが全然構わずマイペースで、しかも実はまだまだ元ヤンどころかヤンキー時代の名残が捨てられない実家暮らしの女史がはっきりとしたコントラストになっているのだろう。

組み合わせとしては面白いけれど、自分がおばさんだからか、女史の振る舞いがあんまり好きになれないうちに作品を読み終えてしまった。おっさんを相棒として見て、彼女なりに頑張って支えているのはわかるのだけど、ああいう感じである必要があったのかなあ、普通にオカルト愛好者なだけで十分だったのでは、と思ったりした。もっとも、おっさんの昔の相棒で且つ元恋人のキャラとまさに正反対、という意味では効果はあったと思う。構成作家女史の方が不器用で格好良くなくてでも正直でまっすぐ、なのに対して元恋人は大手テレビ局勤務で仕事ができてスマートでいい女だけど実は裏もあったからである。

ストーリーの方は最初こそちょっとした取材でしかもオカルト番組にするには空振りだったけれど、最後にはおっさんが過去につきとめたスキャンダルの未解決部分を取材しているうちに本当にオカルト現象に遭ってしまうという結末になった。いろんなフラグが手際よく回収できて最後はそれなりに良い結末になったと思う。

本筋とは関係ないけれど、最後の大型事件の時の某店のみなさんがとてもいい味を出していたし、しかもちょっとしたサプライズもあって楽しめた。

週末の晩にさらっと読むのにちょうどいいかな、と思った。