きぬかつぎ

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小説の感想・横浜ゲートウォッチャー 新米天使のお祓い日誌

猫に続いてついつい釣られてしまうのは自分の知っている土地が出てくる作品である。

文豪ストレイドッグスもそれで読み始めたのだけど、横浜駅SFもそうだし、この作品も横浜って付いているだけで読みたくなってしまった。何と釣られやすい私。

ちょっとネタバレありです。

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本作品を簡単に表現すると、横浜の税関に就職した青年が職場で体験するお話である。

といっても税関24時、みたいなドキュメンタリー的なものではなくて、オカルトがらみの事件だ。

税関で検査中に青年があるものを見てしまうのだが、それは他の人たちには見えていなかった。

一見、青年がそれを見たことが単なる偶然か、あるいは新たな能力発現のように見えたのだけれど、先輩たちと調べていくうちに青年が見えたことが必然であったことがわかる。

そしてこれを機に昔の秘密の集まりを引き継ぐような形でゲートウォッチャーが誕生する、というものだった。

登場人物たちは好みのタイプで、主人公青年の生い立ちも興味深いし神社の息子もなかなかいい味出してるし、彼のお父さんもいい感じだ。他の先輩たちも好感が持てて特別強烈なキャラはないけれどその分蘊蓄に耳を傾けて楽しめる余裕ができる。キャラが濃すぎると何の話をしてもキャラとか決め台詞なんかに喰われて印象に残らなかったりするので、地味な登場人物というのも必要だと思う。

話が逸れたが、好感度高い登場人物を揃え、某先輩がすごく困ったことに巻き込まれてしまい、そして満を辞して明らかになった秘密の集まりの存在、とすごくいい材料ばかり集まったのだけど、話自体はちょっと不完全燃焼だったかな、という感じがした。

事件を引き起こしたそもそもの原因についてはさらっと触れられただけで、こんな謂れのある強力なものを輸入した人物について一文で終わらせちゃうの?と思ったし、主人公青年の過去に由来するある能力はすごいと思うのだけど、能力が発現しているときは他人視点で書かれているだけだし、何かをしでかしてしまいそうなお姉さまが出てきても肝心な時にはランチに行ってるし、黒幕的なお嬢様も最後は色々発言してくれたけど肝心な時にはランチに行ってるし、昔存在した謎組織の明確な能力と役割はよくわからないままだったし。後任組織を結成したって最初の組織が具体的に何をやっていたのかということはよくわからないままだった。判明したのは神社のお父さんが話してくれた由来話だけである。

実に惜しい。シリーズ一作目だからいろんな設定が完全には明らかにされていないのだとしても、せめて今回の事件の原因はもう少し掘り下げてもよかった気がする。紙数に制限があったのであれば、わざと途中で切って次で解決ですよーとするとか。

早く続きを出して、わからなかったいろんなことを判明させて欲しいなあと思った。