マンガの感想・地獄くらやみ花もなき (2)
2巻目のマンガ版は、鵺の話の続きから始まる。
ちょっとネタバレありです。
謎解きから始まるのかな?と思わせておいて一転二転。
この話のハイライトの始まりである。
まずは皓が青児とやってきて現場をチェック、それから棘がやってきて同じことをした。
全く似た者同士である。
結論も同じ。ある程度の教養人ならわかるような証拠があり、そこに二人ともたどり着いたのだ。
でも、そこで真実が解明されて終わりと思いきや、皓たちはいきなり罪をなすりつけられてしまう。棘がそれを説明していると言うのに腹を立てるどころか笑いを堪えつつ従う皓。青児は当然納得がいかないがどうしようもなく一旦引き下がるのだった。というのも、濡れ衣を着せられる少し前に青児の言葉で皓が新たな可能性に気づいたからだ。
じゃあそのあと何とか現場に再登場して本当の真実をみんなに告げるのか?と見えたがこれまた一旦別の方向に展開する。真実を正しく解き明かさないと災いが自分に降りかかってしまう、という皓と棘の間の争いのルールが発動したのだった。なかなかびっくりするシーンが出てくる。
そこでやっと皓が登場して本当は何がどうなっていたのかを解き明かすことになる。
小説版でもここのあたりが一番よかったなと思っていたが、マンガでもやっぱりそうだった。
そしてクライマックスとして、鵺の代わりにあの三毛子が登場。親身になり面倒を見てくれた少女の敵討ちという感じで感動である。
2巻に渡って続いた鵺退治が終わると、もう一つ短めの話が一つ出てくる。
今度は青児が主役の話だ。
考えてみれば青児が皓に出会うためには、それなりの条件があったはずなのだ。
最初その理由は出てこなかったので、あたかも例外で、彼の目のせいなのかな、と思っていたのだがそうではなかった。
話の始まり方は静かで、なんとなくあれ?という感じでゾクゾク感が少しずつやってくる。
彼の過去は恐ろしいというよりひたすら惨めという言葉に尽きる。これじゃああんまりだ、という。
とはいうものの、決まりは決まりだ。だからせいぜいあんまりひどいことにならないといいな、と思いながら読んでしまう。
そしてその願いに応えるように、皓は恐ろしくも粋な決断を下す。
恐ろしいけど粋だというのは変だがそれ以外に表現が浮かばない。
このシリーズが長く続きそうだという意味では粋だけど、実際のところ結構怖いことではある。何事からも逃げながら生きてきた青児には本当は辛いはずだ。
青児もそのことに気づくのだけど、同時に皓に惹かれて(私の解釈!)もいることに気付いている。だからそうか、と彼は思うのだ。
屋敷にたどり着いたときには歓迎し、何度か事件を共に解決してから青児と向き合ったのは最初ちょっと不思議な気がしなくもない。でも最後のシーンを見るとああこれでよかったんだな、と思うのである。同じ釜の飯の仲?それともお互いに補い合えるところを見つけた?それとも運命の出会い?
何にせよ、皓に永久に捕らえられたんだ、と悟った時の青児の脳内シーンは倒錯的で、原作小説でこの話の後に出てくるあれとかこれの話ではどんな風に描かれるのかな?とおばさんはちょっとワクワクしてしまった。