きぬかつぎ

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小説の感想・地獄くらやみ花もなき 肆 百鬼疾る夜行列車

独特の雰囲気が読めば読むほどクセになってくる地獄なシリーズ4作目。

ちょっとネタバレありです。

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地獄に因んだ写真などないので、地獄で働いてる火車さんの親戚の写真を載せてみた。

3作目の最後で衝撃的な知らせが舞い込んできて、それを受けた形の4作目である。

タイトルから想像がつくように今度は豪華列車の中で、クリスティ風の事件解決に挑むことになった。

あの伝説の豪華列車のように、探偵以外の全員がなんらかの後ろめたいことを抱えており、そのせいでいつ何が起きてもおかしくない状況から旅は始まる。本格的ネタバレにならないと思うので書くと、これらの人たちはあの列車みたいに一つの目的があったわけではない。それぞれが別の地獄の闇を抱えていたいのだった。故にいつの間にか列車に乗り込んでいたという訳だった。

とは言っても、皓と青児が関わることが普通の事件な訳がなく、推理小説のようでいてそうとばかりも言えない、どちらかというと推理を始めたものの途中で地獄を前にした(中の人もいるけれど)登場人物たちのドロドロに付き合わされていくことになってしまう。

何しろ最初に1人消えてしまいどこを探しても見つからなくなるのだが、その種明かし?が実は何のトリックでもなく単に元から・・だったとか、それ言い出したら実はほぼ全員が・・だったとかなどという、お約束外の理由と方法だったという。

最初は突然の行方不明とか密室の何とかとか、推理小説は好きだけどこの作品にはそれほど求めてないんだよなあ、と思っていた。乗客のうち誰が執行人で誰がそうでないか、という推理もまあ面白くはあったが、せっかく皓・青児コンビがいて荊棘兄弟も篁さんという材料もあるのに?といささか不満でもあった。

それがだんだん前のめりに読むようになってきたのは、やはり中盤以降、皓にも青児にもだんだんこれが単なる人間たちでないと分かり始めてからだ。そうと分かってしまうと何か最初の辺りはずるいーと思わなくもないけれど、やはりそうでなければおかしいわけである。

そしてもう一つ美味しい?と思うのは逃げてばかりだった青児がひとつだけ、守りたいものができてそれを積極的に言葉にするようになったこと。それをちょっと恥ずかしげに受け止めるようになった皓が、ラストでは自分からある提案を出すまでになり。正直言うとその提案に至った経緯自体はいささか無理がある感が否めない。彼が某妖怪と交渉したらそれこそラスボス対決なはずなので、その顛末も味わいたかった。おそらくページ数と作品内のバランスを考えると省いてよかったのだろうけど。

話がそれたが、皓と青児の関係については、そもそもこのシリーズ自体が皓が青児をペット兼助手として飼い始める?ことから始まるのだから、皓は最初から何となく青児を放っておけないのだろうけど、それでも時間が経つにつれ仲はより親密にというか強い絆で結ばれるようになったんじゃないかとか、こちらの見る目にフィルターがかかり過ぎなのかもしれないが、2人の間の雰囲気はどんどん魅力的になっていくような気がする。特に最初は青児が受け身だったのがどんどん攻めに回り出した辺りから。

コミカライズされるということだし、続編も出るということなのでこれからもいろんな意味で期待いっぱいである。

それと、おみくじで「地獄」が出たら怖い。