きぬかつぎ

マンガ、小説、アニメ、ゲーム、音楽、酒、食、旅、仮想通貨取引や猫と日常生活のこと。

小説の感想・准教授・高槻彰良の考察 呪いと祝いの語りごと

題名を書こうとして昔流行った?文学部某教授という作品名を書いてしまいそうになった。懐かしい。

ちょっとネタバレありです。

f:id:kinu-katsugi:20200109161344j:image

タイトルからしても面白そうなのだが、扱った内容も小説そのものと加えて面白かった。

元々都市伝説をテーマにしているから、それがどうやって成立するものなのかというのは同じなのだけど、チェーンメールは何とか女とか何とかおじさんと違って大人でも一瞬考えてしまう不思議な効力があるらしい。今自分にそういうものが回ってきたら迷惑メールボックスに直行か削除するだろうけど、それは今の状態での話だ。極端に落ち込むようなことがあったり、心配でたまらないことがあったらどうするかわからない気がする。他の伝説みたいに自分が特定の行動を取らないと遭遇しそうにないものと違って、手紙やメールは自分を狙って個人的にやってくるからだ。夜中の学校になんか絶対行かないし、特定の時間に特定の場所で普通はしないような行動もしない。しかし反面、初詣でおみくじを引いて凶が出たら木の枝に結びつけたりする。そうしないと何となく心地がよろしくなくなるというか、やっぱやっておいた方がいいかな、などと思ってしまうからだ。

高槻先生は相談者を助ける意味も兼ねて?わざとチェーンを切ってしまう。最初はそれで何もなかったが、その後事件が起きて、主人公青年はやっぱり不安を感じてしまうのである。例えそれが論理的でなくても。考えてみれば先生はいつも何かに積極的に首を突っ込んでいるのだから、何かに巻き込まれてしまうのは珍しくも何ともないというのに。確かにその通りなのだけど、やっぱり何か不安が拭えないと思うのは不思議だ。ただ、設定上先生も主人公青年も怪異に巻き込まれて普通と異なる状態になってしまったわけだからちょっとくらい不思議なことが起きてもいいとも言える。そう考えだすとキリがないのだが。

いくつか先生にとって楽しくない出来事が起こった中で、一つ物語とは別に笑ってしまったのは古い知り合いのおばさまに話しかけられた時。それ言ったらまずいでしょ、ということまで言ってしまった瞬間がとても爽快だった。話しかけてきた本人は悪気がなかったかもしれないが、その場の空気を読もうとしないからいけないのだ。あれは良かった。

都市伝説なんていっぱいあるし、先生や主人公青年に起こったことがまだ完全に終わっていないだろうと思うので、次作にも大いに期待する。