きぬかつぎ

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マンガの感想・あまつき読了

実に読み応え十分の作品だった。真上から見てハムカツかと思って食べたら分厚いヒレカツだった、というような感じの作品だったと思う。

ネタバレありです。

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この作品はずっと前から読み進めていた。今回で最後の22、23、24巻を一気に読んで読了となった。

最初の感想は「この3巻は特に難しかった」。特に最後の方が劇画調みたいな賑やかさで(特にCさんとか)派手にやらかしてくれたので、それを読んで、見て、そして理解するのが結構大変だったと思う。ねじれた作品を読むのは好きだけれど、これはかなり強力だった気がする。

何がそうさせたのかと言うと、登場人物たちの面倒臭い性格のみならず、彼岸とあまつきの二重キャストなため、えーとこの人は何だっけ、あちらではどんなだったっけ、というのを思い出したりしなければならなかったからだと思う。単に私の老化のせいかもしれないけれど。

シリーズ最初のうちは割と穏やかだった。よくある異世界ものの一種みたいな感じがしていたのだが、あちこちに貼られていた伏線から考えればそんなはずはなく、途中から悪夢と悪夢の間を行ったり来たりしているような展開になった。

何巻目だったか忘れてしまったが、鳥居がたくさん出てきて通りゃんせの唄が出てきたあたりからぞわーっとしたのを覚えている。

そしてその世界そのものが、魔法でも何でもなく実は何人かの人間の手でそれぞれの個人的な願望を叶えるために作り出されたものだと判る。科学の力で願望を叶えるのはもちろん素晴らしいことでもあるのだが、この場合はそれがおぞましい方法でしか叶えられないものだった。

ストーリー前半も決して明るくはなかったけれど、それでも時には友情とか、愛情とかが見られて心が温まる場面もあった。それが後半は一転してもうひたすら暗くなる。伏線を回収すればするほどああ真実など知らなければよかった、と思ってしまうくらいに。

その辺りでこれは精神にくる、と思ったのだが、ここまで読んでしまうともう引き返せないのも人情?である。こちらもまるで操られているかのように最後まで続刊を買い続けた(というのは言い訳だが)。もうバッドエンドでいいや、と思った。

ところが、忘れていたのだがこれは一応科学の力で作られた世界なのである。つまり、パソコンデータと同じでバックアップさえあれば復旧ができる可能性はゼロではないということだ。

主人公は現実に目覚めてからその可能性にかけることにした。それにはお姉さんも弟も協力して、プロジェクトは進んで行く、というところで話は終わる。予想外のハッピーエンドであった。ああこういう選択肢もありね、と思った。

ちょっとだけ残念だったのは、お姉さんよりさらに悪の権現であった人物が最後にまたどこかに雲隠れしたらしいところ。せっかくだから映画「ブラックホール」みたいになって欲しかった。もちろん、マキシミリアンに囚われて永遠に悪夢の世界にとどまる、というものだ。

総評としては全24巻、かなり読み応えのある作品だったと思う。心が折れやすい人にはあまり向かないと思うけれど。