きぬかつぎ

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マンガの感想・暁の闇

無数にある陰陽師物のひとつだが独特の雰囲気を持つ作品。絵が美しいが飾りすぎていないので見飽きない絵柄だと思う。

5巻で完結するのだがストーリー展開が割といろいろあって、それらがかなり綺麗にまとまっていて安心して読了できた。

ネタバレありです。

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本作品をちょっとラフにまとめると、力を失ったがために陰陽師の底辺(?)に生きねばならない主人公が、これまた権力を剥奪されたが故に辺境でひっそり暮らす不遇の皇子と出会ったことで、お互いに人間として惹かれ合いながら成長しより良い未来に向けていく話である。

ストーリー自体は正直言うと私の好みではないのだが、登場人物達が気に入ってつい読み進めてしまった。

人間である主人公より人間臭い蝦蟇や、皇子大好きな狐殿がしょっぱなから出てきてかなりいい味を出してくれる。同じようにカチカチの武闘派でかつ龍の宮様一筋の三位中将にさりげなく絡んでいつの間にか仲間になってしまう頭中将もなかなか面白い。それに加えて自分と甥の復讐を一石二鳥でやってやろうと暗躍するお山の法親王様の俗っぽさも気に入った。双子の陰陽師達は途中で悪役から善役に変わる時点をもう少し細かく描いて欲しかった気がするが、流れ的には辻褄も合うし、悪役のまま主人公と対決などしないでくれたのがまた私の好みの展開だった。

それから良いなと思ったのが時々出てくる風景のコマ。まず惹かれたのは龍の宮のうらびれた屋敷で狐殿が琵琶を奏するシーン。昔の映画だったらこれだけで5分は持たせたに違いない。妖術など使っていないのに妖しくてゾクッとするところが良かった。あるいは屋敷で主人公が一人で変化を抑えようと臥せるシーン。ネガティブなシーンなのだけど、暗闇で布を被ってうずくまる彼を式神が何も言わず宙から見つめるところが何とも言えない雰囲気でじっと見てしまった。

1つ難点というか、絵柄は美しいのだけど人物の顔の区別があまりつかないところはマイナスだった。えーとこれは一体誰?と思ってしまうコマが複数あった。

それから欲を言うと龍はもう少し一般的な龍の顔にした方が良かったような気がする。龍のようなものには見えることは確かだが、何かのゲームに出てくる新しいモンスターの顔と言われてしまうとそう見えなくもない気がするのだ。人物もクセのない標準的な顔立ちだし、蝦蟇もかなりリアルにうまく描けているし狐もいかにも的に描けていただけに。蝦蟇は苦手な人もいるだろうけどあれだったらキーホルダーでもいいかな?と言う気が個人的にはした。